純水とは

純水とは

純水とは、「不純物が少なく純度の高い水」のことを指します。主に塩類や有機物などがほとんどすべて除去された状態を指し、不純物を取り除く方法により、

脱塩水(イオン交換樹脂などにより塩類を除去した水)
RO水(逆浸透膜を通した水)
蒸留水(水蒸気を冷やして液体にした水)

などと呼ばれます。

例えば、一般的な水道水の中に存在する不純物としては、以下が挙げられます。

塩類例えばカルシウムや炭酸ガスなど、主にイオンの状態で溶解しているもの。
残留塩素必ずしも不純物とは呼べないが、純水を造る際には「取り除くべき対象」となる。
微粒子例えば微細な砂など
有機物例えば微生物の残骸など
電解しないガス例えば酸素ガスや窒素ガスなど

純水は、これらのうち主に塩類や残留塩素がほとんどすべて除去された状態を指します。水道水レベルの水を単にフィルターなどでろ過、または活性炭を通しただけでは純水とは呼べません。

一方、カルシウムやマグネシウムのようなミネラル分も一切含まないことから、ミネラルの補給という効果は得られません。

尚、日本薬局方に定められている「精製水」も純水の一種であます。

主な用途

半導体などの電子部品や電子回路の基板、液晶パネルに使うガラスなどの製造においては、極微量の不純物が残っていても製品の品質に重大な影響を及ぼす。このため、通常の純水の純度では足りず、純度を更に上げた超純水を用いる。純水はその原料とされます。

食品や飲料、更には医薬品や日用品を工業的に作る場合においても、水道水や河川水、井戸水などに残っている不純物はその量が一定しません。このため、これをそのまま用いると品質のばらつきや化学的性質の不安定化などの問題を引き起こす事があります。そこで純水を用いておけば、こうした問題を未然に防ぐことができます。

ボイラーや加湿器、更には微細なノズルなど、水の温度が変化したり、蒸発が生じたりする用途では、水に不純物が含まれると、水垢が生じて配管を閉塞したり、伝熱を妨げたりするなど重大な障害を引き起こすため、純水が用いられることが多い。


鉛蓄電池の電解液に、不純物の入った水を用いると、その電極の表面に不純物が析出して電流の発生を妨げるため、原材料としてはもとより、蒸発や電気分解で失われる水を補う場合にも、純水が必須といえます。

コンタクトレンズの洗浄液として、水道水では塩素が残っているため、メンテナンスのためにも純水が必要でしょう。

純水の製造法

純水を造るには、イオン交換樹脂や逆浸透膜の普及により、安価に大量の純水を得られるようになりました。

純水装置の構成要素とその特徴

蒸留器を用いて蒸留する方法

最も古くから存在する製造法であり、性能も良いです。

しかし、水を沸騰させるには多大なエネルギーが必要で、さらに連続運転が難しいために製造コストが高いです。また供給した水の一部を不純物が濃縮された排水として捨てる必要があります。現在では、医療用や研究施設の小規模装置に採用されるに過ぎません。

イオン交換樹脂を用いてイオン交換する方法

供給した水のほぼ全量を純水として採水できます。平均イオン除去率は99%程度。多段化することで、いわゆる理論的に可能な高除去率の純水製造装置を作ることができます。

しかし、イオン交換樹脂はいつまでも使用し続けられるわけではなく、塩酸や水酸化ナトリウムといった薬品を使ってイオン交換樹脂を再生(イオンの置換)することが必要であり、またイオン以外の不純物を取り除く能力が低いです。浮遊物質や有機物、残留塩素が存在すると、総合的な性能低下が著しくなるので、前処理が必要となる場合があります。

イオン交換樹脂についてもっと詳しく

EDI(電気再生式イオン交換装置)を用いた方法

薬品が不要であり、長時間の連続運転も容易なので運転コストが最も安いです。

しかし、常に直流電源を必要とする上に、イオンが濃縮された排水が出るし、イオン以外の不純物を取り除く能力が低い。イオン交換法同様、十分な前処理が必要です。

EDI(電気再生式イオン交換装置)についてもっと詳しく

逆浸透膜を用いた方法

イオンだけでなく、水に不溶の微粒子や有機物も除去できます。しかし、一部のイオン(特にホウ素などイオンの半径の小さいもの)の除去が苦手で、50%前後の除去率です。また、溶存ガスの除去も困難です。これらの物質は事前に活性炭処理やイオン交換処理、脱気処理などを行うことで処理することができます。

多くの逆浸透膜のシステムでは他の処理と組み合わせて利用されています。

逆浸透膜法は、膜界面のイオンが溶解度を超え析出してくるため、一般に全量処理が困難です。逆浸透膜単段では、平均イオン除去率が90~95%(電気伝導率規準)であり、ボイラー給水や半導体製造用水では、更にイオンを除去する必要があるため、イオン交換法やEDI法を後段処理に設けることが一般的ですが、逆浸透膜装置を多段化することで、イオン交換法と同等レベルの性能を持つ装置の採用例もあります。

コンパクト型装置も発売されており、純水製造の主たる位置を占めつつあります。

RO膜(逆浸透膜)についてもっと詳しく

活性炭を用いた方法

水に不溶の微粒子や有機物、残留塩素の除去が可能で、供給した水のほぼ全量を採水できます。

しかし、イオンは殆ど除去できず、浮遊物質は活性炭表面の微細な穴(マイクロポアー)を閉塞してしまうと有機物や残留塩素を除去できなくなるため、頻繁な活性炭の交換もしくは前処理が必要です。イオン交換法や逆浸透膜法の前処理として採用されます。

フィルターを用いた方法

水に不溶の粒子を安価に(フィルターに通すだけで)除去できます。

しかし、その他のものは殆ど除去できず、またフィルターの頻繁な交換が必要です。

イオン交換法や逆浸透膜法の前処理として採用されます。また、半導体製造や医薬用水製造向けでは、限外ろ過(UF)を最終的な微粒子や大分子の有機物の除去に使用されることが多いです。